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実施計画

(1)取組の趣旨・目的・達成目標

[1]取組を実施するに当たって

新潟大学人文学部は、平成16年度カリキュラム改革以後、教育成果を順調に向上させてきたことは就職率、就職先、卒業生アンケートその他各種調査の数値から証明されている。しかし、学生の計画立案能力、主体性、チームワーク力などの涵養については十分な評価を得ておらず、この点が一層教職員の能力を発揮すべき課題であることが明らかである。他方、日本の大学全体が抱えている課題として、大学の実質的価値が厳しく問われていることを挙げることができ、その結果、国立大学法人化や、無駄撲滅プロジェクトによるGP批判などが生じている。大学は従来以上に社会に対し教育活動の価値と成果を積極的に発信ていかねばならない。本取組は、この二つの課題を解決し、大学の教育機能の向上を目指す。

上記課題に対応するため、座学を超えて学生が主体的・実践的に学び、その表現の場を学外に展開するよう、少人数教育による体系的な教育課程の再編を行う。先ず、多様な「座学」講義系授業群を貫く中軸として、4年一貫した少人数演習系授業を整備する。多くの大学では高年次演習(ゼミ)と基礎演習(基礎ゼミ)が用意されている。しかし、教育学の学会で報告されているように、それらが円滑に連結していない場合がしばしば見られる。本取組では、基礎段階での演習科目を重層的に二段階編成として専門の演習科目へつなげ、入学時から卒業まで一貫した少人数演習教育を完備する。また高年次では、第2~4年次の表現プロジェクト演習と、第3~4年次の専門演習との二翼構成とする。前者の演習では、学生は「創造する過程」を少人数のグループで体験し、「課題探求能力」「主体性」「協同力」の涵養に取り組む。文化創出の現場を体験し、他の人の意見をよく聴き取り(「傾聴力」)、情況を理解すること、つまり「築く力」と「気づく力」を結びつけ、同時に、人と人との関係、地域との関係、他の国の人々との関係を大切にする「つなぐ力」を育てる。

課題を設定し、探求の道筋を計画し、共同で制作活動を行い、成果を社会に向けて発信する。それにより、「学びの場」が大学内の学習環境から大きく社会へと広がっていくことにもなる。高年次の二翼演習体系は相互補完的なものである。つまり、表現プロジェクト演習での学びは専門演習での学習活動を活性化させ、専門演習での専門的知識・技能の吸収は表現プロジェクト演習での創造活動の質を向上させる。同時にこの二翼体系は質の異なる幅広い学びを保証するものともなる。そして、このような学びを実効あるものとするため、学びの成果を発信する場の確保、発信されたものに関する諸反応をキャッチする手段の確保、一連の新たな幅広い学びに対する正当な評価方法の設定、教育手法を絶えず改善していくメカニズムが求められてくる。

[2]取組の具体的な目的

本取組は「取組の概要」で述べたように五つの方策から成る。第一に、演習科目の4年一貫した、かつ二翼の体系の構築は、学生が単なる専門的知識の集積である学習から脱却し、専門的知識を使いこなす「きづく力」と「つなぐ力」を養うことを目的とする。第二(三つの拠点)および第三(アーカイヴ・センター)の方策は、学生が「きづく力」によって作り上げたものを社会に発信し、自らと社会とを「つなぐ力」を養うことを目的とする。同時に、社会から学ぶ(社会からの「受信」)ことを通して「きづく力」をさらに向上させることも目的とする。第四に、新たな成績評価方法の開発は、学生の幅広い学びとその深化を正当に評価し、それを通して学生の主体的な学びへと向かう姿勢を活性化させることを目的とする。第五に、大学を越えたPDCAサイクルの構築は、教職員の教育能力を向上させるとともに、学生の自己修正能力を訓練し、「きづく力」を安定的に発揮させることを目的とする。

[3]取組による達成目標

上記の五方策の有機的連携により、学生は深い専門的知識によって社会をひら(啓)く能力を備え、少人数演習や社会への成果発信を通して実践的に鍛えられたコミュニケーション能力によって社会をひら(開)く能力を活用し、社会からの評価を受け止め、大学外の知を摂取することにより、社会をひら(披)いて学ぶ経験と意欲を持ち、将来に向けて新たな課題に立ち向かい社会をひら(拓)く活躍のできる人材となることが期待される。

(2)取組の具体的内容・実施体制等 [申請書類等作成・提出についてP.4参照]

学生が従来の座学の姿を超えて主体的・実践的に学ぶこと、その表現の場を大学の外に展開すること、それにより生じる反応を教育活動の改善に組み入れること、そのための体系的な教育課程の再編を実現することが、今回のGP申請の趣旨である。具体的な方策は以下の五つである。

第一に、演習科目の一貫した体系を、学士課程全体にわたる中軸とする(以下、第一~三の方策について図1参照)。学生は、段階的に編成された専門科目群と教養科目群に取り囲まれつつ、先ず、第1,2セメスターで人文総合演習A,Bを履修する。その後、専門を深めるために、第3,4セメスターで基礎演習A,B、第5~8セメスターで専門演習を履修する。他方、この専門の学習と並行して、第3~8セメスターで表現プロジェクト演習を履修する。全国的には、3,4年次での専門演習を備えている大学や、専門演習とそれに先行する基礎演習(基礎ゼミ)を備えている大学が少なくないが、1年の初年次教育から卒業まで途切れることがない演習体系を重層的三段編成によって備え、かつ高年次で専門と超専門の二翼体制になる演習体系は、他に例がない。少人数指導で実施されるこれら演習科目では、教員学生間の対話や学生同士の対話を通して進められる双方向型学習により、「きづく力」(気付く、築く)、即ち、主体的に課題を探求し、方策を見つけ、答を導く能力、主体的に意見を構築し、仲間をつくりあげる能力と、「つなぐ力」である共同力やチームワーク力、対話能力を涵養する。特に表現プロジェクト演習は、高年次で履修するものでありながら専門を越えた内容と学生編成を有し、人文的創造的活動を行い、幅広い学びを保証する。具体的には、演劇上演の企画と実施、ラジオ番組の制作と民間ラジオ局からの放送、新聞紙面や折込情報誌の制作と新聞社を通しての一般家庭への配布、幅広い市民を対象とした各種イベントの企画と実施、文化誌や広報誌の制作と配布、ファイバーワークの制作と展示等々、プロジェクト型の多様な活動が行われる。また、高年次の学生にTAやSAになる機会を提供し、学年間での交流を通した学びを推進するものともなる。



第二に、上記演習科目の学習成果を学生が三つの学外拠点から社会に向けて発信する。先ず白山エリアは、古い町屋、県民会館、芸術文化会館等があり、高齢者と若い芸術家市民が集う、伝統・芸術・文化・伝統の中枢である。ここで町屋ギャラリーや各種会館を利用し、学習成果の展示・発表を行う。古町エリアは、日本銀行新潟支店および各種金融機関が集まり、ビジネスマンが活動すると共に、各種商店が密集し、経済・消費の中枢である。このエリアの中央に立つ総合テナントビルNext21の1階展示ロビーと6階展示スペースを利用し、学習成果の展示・発表を行う。中央駅エリアは、物と人の移動の拠点である新潟駅、巨大書店、各種商店が混在し、物・人・情報の流通の中枢である。新潟駅に隣接した新潟大学駅南キャンパスを利用し、学習成果の展示・発表を行う。このように三つのエリアは、それぞれ相の異なる市民が行き交う場である。学習成果をそこで発表・展示すれば、特定の専門家集団や関係者・利害団体などの狭い集団からの評価ではなく、多様な社会からの意見を吸収できる。また、発表・展示までの企画や運営自体が重要な学びであると共に、そこに至るまでの三拠点での活動や市民との対話が学外での社会からの学びである(社会からの「受信」)。これを社会と人文学部との送受信を行う人文トライアングル・アンテナと呼ぶ。

第三に、学生は学習成果や学習素材をアーカイヴ化によって発信する。上記演習科目の成果や地域社会の文化的遺産を保存、編集、整備、発信する学習を通して、学生は最新の情報通信技術と活用方法を身につける。各種演習の成果をまとめるだけでなく、地域社会と密着する活動として、財団法人北方文化博物館との連携により、同館の所蔵する写真、絵はがきなどの資料の発掘、整理、デジタル化保存処置を行い、公開に向けて資料を整理する。また、新潟大学附属図書館所蔵のCIE(アメリカ文化センター)より寄贈された映画(36本)と Voice Of America 音声オープン・テープ(672本)について、映像のデジタル化保存処置を行い、公開に向けて資料を整理する。発信することによってえられるWEB上での市民からの反応により、自らの活動を省察する。第二の方策がアナログ的送受信であるのに対し、第三の方策はデジタルな送受信となる。



第四に、上記に対応する成績評価方法を開発する(図2参照)。先ず、教員は、学習成果物及び学習・教育双方のポートフォリオを活用し、Analytic-trait rubrics(観点別ルーブリックス)によって複眼的な成績評価を行う。一方、共同力などについてはチームの中で活動する者となって初めて感知される部分もあるので、学生もAnalytic-trait rubricsによる相互評価を行う(学生の相互評価の試みについては本学に8年間の実績がある)。教員は、教員・学生双方の評価を総合し、Holistic rubric(全体的ルーブリック)による評価にまとめる。以上のルーブリックを構築する際に必要となるルーブリック・アンカーの基材については、平成20年度及び平成21年度における「超域文化論」「地域文化論」実施の実績から確保することができる。他方、既定の評価項目とは別に評価すべき事柄が生じることもありうる。その場合、教員は特定観点評価をHolistic rubric評価に加味する。これを0~100の数値評価に変換した後、新潟大学全体の基準に基づきGPが表示される。なお、上記一連の成績評価の基盤となる各ルーブリックの【尺度】【記述語】【兆候】【アンカー】および【特定観点】は、可能な限り公開する。以上により多面的な評価を実現しながら、達成度型教育と社会に対する教育の質保証を担保する。



第五に大学を越えたPDCAサイクルを構築する(図3参照)。教育内容立案及び実施の諸委員会がセメスター毎に実施内容とその効果を検討する際に、三種の学外評価委員の意見(上記人文ボード・トライアングル)、三拠点(上記人文トライアングル・アンテナ)での市民からの反応やWEB上での学外からの反応を摂取し(人文ヘクサグラム・システム)、FD・SDを定期的に実施して自己修正を行う。

【取組の実施に向けた実施体制】

本取組を円滑に実施していくため、GP推進委員会を新設して運営に責任をもたせ、教育計画委員会、同WG、点検評価委員会、同WG、学務委員会、アドバイザー会議、主専攻プログラム代表者会議、主専攻プログラムWG、主専攻プログラム教員会議(以上10委員会をGP実施担当諸委員会と呼ぶ)と連携させて、効果的な運営体制を整備する。他方、3年次学生・大学院生をTAとして採用し、初年次教育に積極的に活用する。上級生にとっては、「教えること」が「学ぶこと」につながる。また、人文アーカイヴ・センターの立ち上げと、運営を軌道に乗せるための専門職員を採用する。

(3)取組の評価体制・評価方法

[1]評価体制

自己点検自己評価活動、学生のポートフォリオ、卒業生アンケート、人文ヘクサグラム・システム人文トライアングル・アンテナ人文ボード・トライアングル人文アーカイヴ・センター)を通してデータを集める。それらを教育計画委員会、同WG、点検評価委員会、同WG、学務委員会がまとめ(以上5委員会をGP点検担当諸委員会と呼ぶ)、教育目的の達成程度を調べる。財政支援期間終了時には、支援期間のデータをまとめ、外部評価委員を含む総合評価委員会を設け、シンポジウム等の企画を経て、総括評価を行う。

[2]評価方法

取組の達成目標に対する評価方法・指標や成果の測定については、学外から有識者を招いてFDなどで指導を受けつつ、GP点検担当諸委員会で具体的な指標を教職員に示し、毎年修正や改訂を行う。これを取組へ反映させるため、GP実施担当諸委員会が連携してFDを開催し、教育能力の向上を図り、実効あるPDCAサイクルを構築する。

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