みなさんこんにちは。TAの毛久燕です。
前回の調査で小国町で聞いた昔話を、日本人学生が一人ずつ分担して整理することになりました。今回と次回の授業は、主に録音を聞きながら、皆が整理してきた昔話を確認します。
今日は鈴木百合子さんの「ふるやのもりや」と五十嵐サチさんの「魚売りと鬼婆」を確認しました。すると、方言ではっきりしない部分がたくさん出てきて、学生からいろいろな質問が出ました。解決できないところは、第三回の補充調査で語手の方々や高橋先生に聞いて確認します。ここで、とりあえずこの二つの昔話のあらすじを紹介します。
○「ふるやのもりや」
昔、お爺さんとお婆さんが、血統書付きの馬を飼って暮らしていた。ある寒い晩、馬の餌を煮ながら、お爺さんとお婆さんは仲良く世間話をして、お茶を飲んでいた。すると、狼がこの家の馬を食べようと思って来て、縁の下に隠れた。囲炉裏で話していたお爺さんが、世の中に一番恐ろしいものは何かと聞くと、お婆さんは狼と言ったが、お爺さんは「ふるやのもりや」が恐いと言った。狼は「ふるやのもりや」と聞いて、自分より強いものがいると思い、恐ろしくなって逃げ出した。この日はちょうど馬泥棒も馬を盗もうと思ってこの家に来ていた。馬泥棒は飛び出した狼を逃げた馬と思って、必死でその背中へ飛び乗った。狼は、自分の背中に乗ったのはふるやのもりやであると思って、全速力で走って振り落とそうとした。走っているうちに夜が明け、やっと馬泥棒は自分が狼に乗っていたことが分かった。狼が木の切り株にぶつかって、振り落とされた馬泥棒はあわててそばの井戸に逃げ込んだ。狼は背中の怖いものが落ちて、ほっとした。狼は「ふるやのもりや」が井戸に逃げこんだのを見て、掴まえようと思い、仲間を呼び出し、いろいろな動物が来た。狼は動物たちに井戸を調べに行けと命令したが、皆怖いので、行きたくない。猿が遅れて来て、動物たちは猿に、お前は遅刻したのだから行けと言った。猿は仕方なく井戸を調べに行った。そのころ、猿のしっぽは長かった。猿が降りて行くと、井戸の下にいる馬泥棒は上に登ろうと思って、猿のしっぽを掴まえて引っ張った。すると、しっぽが切れてしまった。そのせいで、猿の尻は赤くなり、顔も力んで赤くなった。結局、「ふるやのもりや」は本当は何であったかというと、のめしこき(怠け者)で、家の屋根の修理を怠ると、雨漏りがする。これをお爺さんは雨漏りが一番おそろしいものだと言ったのであった。
○「魚売りと鬼婆」
小国の八石山に鬼婆が住んでいた。八石山の向うの浜から魚を担いで山を超えて来る魚売りは、いつも魚をこの鬼婆に横取りされていた。ある日、魚売りは、今日こそ鬼婆を退治しようと思って、小国への道を歩いていた。するとやはり、鬼婆が出てきた。この日も魚売りは魚を全部鬼婆に横取りされたが、鬼婆が魚を食べている隙に、魚売りはさっさと鬼婆の家にいって天井裏に隠れた。しばらくたつと鬼婆が帰ってきて、甘酒を飲もうと囲炉裏にかけたまま居眠りをはじめた。鬼婆がぐっすり眠ると、魚売りは、上から葦の茎で、甘酒をすべて飲んでしまった。鬼婆は目を覚まして、甘酒がないので、今度は餅を焼いたが、また寝てしまった。魚売りは餅を葦の茎に突き刺して食べた。鬼婆は目を覚まして、カマド神が餅もみんな食べたと思った。カマド神ならどうしようもないと思って、木の唐櫃か石の唐櫃に寝ようとした。魚売りは、声音を変えて、木の唐櫃に寝るように勧めた。鬼婆が寝ると、魚売りは木の唐櫃に孔を開け、そこへ熱湯を注いで鬼婆を退治した。それから、魚売りは安心して、商売ができるようになった。
次回も小国の昔話の紹介を続けます。お楽しみに!